参考文献:分子生物学の基礎(Malacinski, Freifielder著、川喜田正夫訳/東京科学同人)
 
 
前回はDNAについて、ごく基本的な話をしたね。
細胞の中に普通に存在している核酸といえばDNAと・・・そう、RNA。
でも、DNAは遺伝子の本体、というのは有名だけど、RNAがどんな仕事をしているのか・・・?
今回はそんなお話で〜す。
あと、先に言っとくけど「セントラルドグマ」ってのはエヴァじゃないからね。
 
 
Problem.9
細胞内に存在するRNAには普通、どのような種類があるか。
また、DNAに含まれる塩基が「A、T、G、C」であるのに対し、RNAにはTではなくUが
使われている。これにはどのような理由があると考えられるか。
 
 
さて、前回DNAについてやった時に、DNAを構成する4種類の塩基というのがあったね。
RNAは今回↑に書いてあるとおり、普通A、U、G、Cの4種類の塩基から構成されているんだけど
今回もまずはそれらの構造を見てみることから始めましょう。
 
 
 
 
新しく出てきたのはウラシルだけだけど、参考のために他の塩基も並べて描いておいたわ。
こうして見ると、特にチミンとウラシルは構造がそっくりな事が分かるんじゃないかな?
ふむふむ・・・確かに。違いは上についてる「-CH3」だけですね。
そうだね。
高校の化学で出てくるとおり、「-CH3」の名前は「メチル基」だったね。
それがウラシルの5番目の炭素(環のような構造がある時、どこの炭素を何番目にするかは
決まりがあるのよ)のところについたものがチミンというわけ。
だからチミンは別名「5−メチルウラシル」とも言うのよ。
へぇ〜。
で、ペアを作る塩基もチミンと同じで、ウラシルはアデニンとペアを作るの。
DNAでは「AとT」「GとC」だったのが、RNAでは「AとU」「GとC」になっている、
と覚えておけばとりあえずはだいたい大丈夫、かな?
は〜い。
ではいよいよ本題に・・・細胞の中に存在しているRNAには、大きく次の3種類があるわ。
1.メッセンジャーRNA(mRNA):不安定である
2.転移RNA(tRNA):安定に存在する
3.リボソームRNA(rRNA):安定に存在する
このうちtRNAとrRNAについては、転写・翻訳について説明する時にまた出てくると思うから今回は とりあえずパス。
ここからはmRNAというものについて見ていくことにしましょう。
あ、「安定」「不安定」というのは、そのRNAが細胞の中で作られたり壊されたりが繰り返されているのが 「不安定」、
一度作られたらその後、長い時間存在し続けるのが「安定」だと思ってね。
ふーむ・・・DNAみたいに、単に「RNA」というものが一種類存在する、というわけでは
ないんですね・・・
さて・・・遺伝情報は遺伝子の本体であるDNAにすべて納められている、というのは知ってるね。
細胞にとってとにかく一番重要な仕事というのは「必要なタンパク質を次から次へと合成する」事なのね。
そのタンパク質の設計図も当然、すべてDNAのどこかに書きこまれているわけなんだけど、細胞では
DNAを直接「読んで」そのとおりにタンパク質を合成するのではなく、DNAの配列を元にしていったん
mRNAを作って、そのmRNAを使ってタンパク質を合成する、という二段階の手順を踏んで作業が
行われているのよ。
お、mRNAの名前が出てきましたね。う〜ん・・・
でも、二段階なんてなんだか無駄があるような気もしますけど・・・
タンパク質にはものすごくいろいろな種類があるんだけど、細胞にとってその全部が常に必要、という
わけではないのね。たとえば「あるミネラルが不足した時に、それを集めてくる」という仕事をする
タンパク質があったとすると、特にミネラルが不足してもいないのにそのタンパク質をどんどん作る
というのは、単に無駄があるだけじゃなくて命にかかわることにもなりかねないの。
えーっと、そうすると・・・タンパク質が作られないようにするには、DNAからmRNAが
作られるのを邪魔してしまうのと、mRNAからタンパク質が作られるのを邪魔するのの2通りが
考えられますね。1つの方法しか無いよりは、細かく調節がきく、という事なのかな?
実際に、生物の細胞の中ではその2通りの調節をうまく使い分けて、必要な時に必要な量だけ
タンパク質が作られるようになっているの。mRNAが作られる量を調節するのは「転写制御」、
RNAからタンパク質が作られるのを調節するのは「翻訳制御」なんて言うね。
ま、これも詳しくはそのうち・・・という事で。
は〜い。
ちなみに、タンパク質の構造を「読んで」それをmRNAに翻訳したりする事は無いと
されているわ(少なくとも現在までにそういう例は見つかっていない)。
遺伝情報は「核酸→タンパク質」の方向に流れて、逆は無いというきまりの事を「セントラルドグマ」 と言うのよ。

さて、次はえっと・・・
「DNAは『ATGC』で、RNAは『AUGC』なのはなぜか」だったね。もちろん、絶対にそうだ
とは言いきれない仮定のお話ではあるけど、広く受け入れられている仮説を紹介しましょう。
まずは、「DNAはなぜ『ATGC』なのか」から・・・
どんな話かな?どんな話かな?
えっと、これまでに出てきたA、T、G、C、Uの5種類の塩基物質があったね。
これらは遺伝子として情報を記録するのに使われる物質だけあって、生物の体の中でも非常に安定な
状態で存在し続ける、と言いたいところだけど・・・
実はシトシンだけは、脱アミノ化という反応によって自然に壊れてしまうことがあるの。
(この反応はとってもゆっくりだけど、動物の体温くらいの条件でも普通に起こるのよ)
 
 
 
 
あれ?この右側に出てきたのって・・・ウラシルじゃないですか?
そうだね。シトシンは自然に壊れてウラシルになる・・・これは困ったことだね。
CはGとペアを作るけど、UはGじゃなくてAとペアを作るんだったね。ということは、シトシンが
脱アミノ化によって壊れてしまったのを放置しておくと、DNAがコピーされる 時に
間違った情報に書き変わってしまう
という事になるね。
 
 
 
 
遺伝子の情報は、まあ少なくとも生物の一生を通してくらいのレベルでは保存されないといけない
(勝手に変わったりしたら駄目)から、このままではDNAは遺伝子としてまったく役に立たない物質だ、
という事になってしまうね。
(注:脱アミノ化反応は「とってもゆっくり」起こると書いたけど、DNAに含まれている塩基は
それこそ膨大な数があるという点に注意してね。人間の場合だと、一日に細胞一個 あたり
100か所くらいは脱アミノ化反応が起こる
と言われているわ。
全身じゃなくて細胞一個あたりでこの数だから、これがそのままになってたら大変なことだね。)
うーん・・・これじゃあ何回も細胞分裂してるうちに、どんどん遺伝情報が変わっちゃいますよ。
でも大丈夫。何度も書くけど、DNAは「A、T、G、C」、RNAは「A、U、G、C」だったよね。
つまり「DNAには普通ウラシルは含まれていない」ということ。逆に言えば、もしDNAの中で ウラシルを見つけたら、
それは間違いだから取り除いてしまえばいいということだね。
おぉ〜・・・
細胞の中には実際に、DNAの中でウラシルを見つけるとそれを除去してしまうような酵素があるの。
その後は、その「すきま」には、反対にもともとあった塩基・・・つまりGとペアを作るものを 補充すれば
いいんだから、DNAの修復が行われればもとどおりCが復帰する、というわけだね。
うまくできてるんですね〜。
でもそれなら逆に、RNAにもウラシルじゃなくてチミンを使えばいいような気がするんですけど・・・
じゃあその点について、ひとつの仮説を紹介しましょうか。
ただしここからは新しい物質名とか用語が一気にたくさん出てくるから、一度休憩してから 読んだほうがいいかもね。
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