問題の出典:2004年 大阪大学大学院理学研究科 物理学・宇宙地球科学専攻入学試験問題 (物理学第 1 問・一部改題)
 
 
え?大学院?!
そう。
もちろん普通は大学院入試というのは、大学で勉強した事の中から出るんだけどたまにはこんな 問題もあるのね。
でも、出題ページで書いたとおり、物理的なセンスが必要な問題だから「これから本格的な 研究の道に進もう」という人だけが受ける
(はずの)大学院入試としてはなかなか面白い問題だと思うわ。
さて、計算自体は高校生でもできるけど、この問題を読んで道筋が思い浮かぶかな?
では、がんばりますっ。
この説明では、高校の物理IIの内容(ただし力学のみ)についてはきちんと理解しているという前提で話をするから、
ちょっと忘れちゃったという人や習ってないという人は、簡単にでいいから勉強してから読むほうがいいかもね。
 
 
 
 
まず、問題文が漠然としすぎているから「何に向かって計算していけばいいか」をはっきりさせておきましょう。
この形にたどり着ければいいという目標がないまま計算しても、うまくいきっこないからね。
未知数が多いような気もするけど・・・大丈夫かな?
それはやってみないと分からない・・・という部分もあるけどね。でも、密度そのものの値を求めなさいという 問題じゃなくて
比を求めるのが目的だから、最終的に分母・分子で約分できるならいくつ未知数があっても 大丈夫なはずだよね。
 
 
 
 
こんなふうに、「まったくの間違いにならない程度に問題を簡略化して考える」というのも物理に必要なセンス といえるね。
公転運動は楕円を描くとか、月も太陽の重力の影響を全く受けないわけではないとか、それは確かに そうなんだけど、
そういう事をきちんと考えても計算量が増えるわりに、正確さはそんなに 変わらないのね。
そもそも試験の場の、資料持ち込み禁止&限られた時間の中でそこまで考えてられない、 ってのもあるけど・・・
もちろん彗星みたいに極端な楕円を描いて公転しているような天体を考えるときは これじゃダメだけど、
地球や月の公転はかなり円に近いからこれでもかなりいい結果が得られるのよ。
で、問題にあった月の質量は地球の質量の 80 分の 1 、という条件を使うとこの式(2)までが得られるね。
うーん、でもまだ消えない文字がたくさんありますよ・・・
ではここで問題。一年は何日だったかな?
えっ?
えーと、365 日ですよね。でもそれが何か?
じゃあ、月は何日で地球のまわりを回るでしょう?
えーっと確か・・・ 27 日くらいだったかな?
うん、だいたいそんな感じだね。
正確な値は後でまた調べるとして・・・とりあえずこのことから、次のことがいえるんじゃないかな?
 
 
 
 
・・・
このことは問題文のどこにも書いてないけど、 だいたい誰でも知っているような事だよね。
こういう手持ちの知識から、「使える」ものを掘り出してくる能力も 物理をやる人にとっては大切なものと言えるわ。
でも、これでもやっぱり文字が足りませんよ・・・
この問題、オリジナルのものは「太郎君と花子さんはアフリカに金環食を見に行きました」の文で始まるのよ。
・・・???
日食、それも皆既日食や金環食はなぜ見えるか分かるかな?
それは、地球と太陽の間に月が入るからですね。
じゃあ、水星や金星が地球と太陽の間に入ったときには「日食」と言わず「日面通過」と呼ぶのはなぜかな?
水星や金星は、地球から見ると小さな点にしか見えないから、太陽を隠すことがないから・・・かな?
そうだね。
でもひとつ注意しないといけないのは、水星も金星も月より大きいという事。
大きなものでも遠くにあれば小さく見える、というのは当たり前だよね。
逆にいえば、月は地球の近くにあるから、日食を起こすくらいに大きく見えるということ。
はい。
それも、太陽が全部隠れるような日食が起こるということは 地球から見たときに月と太陽はほとんど同じ大きさに見えるということだよね。
このことから、次の図のような関係が出てくるわ。
(例によって、この図は分かりやすいように大げさに描いているから大きさの関係なんかは正確じゃないよ。)
 
 
 
 
地球から月と太陽がほとんど同じ大きさに見えるということで、それぞれの「地球からの距離」と「半径」
からできる直角三角形は、相似であることが分かるね。
これで必要な情報はすべて揃ったわ。あとは計算するだけだね。
なるほどぉ・・・
 
 
 
 
ちなみに、実際の月の平均密度は太陽の平均密度のおよそ 2.37 倍なのよ。
なかなか近い値が出ているけどもちろん、計算の途中で使った値をもっと精度よくすればさらにいい答えが出るだろうね。
たとえば一年は 365 日として計算したけど、4 年に一回うるう年が来ることを考えると実際はおよそ 365.25 日と 考えられるよね。
まあ、こうやって考えるのにも限度はあるし、何より出題文で地球と月の質量の比が 整数の桁までしか出ていない
(小数の桁は出ていない)んだから、他の数字ばかり桁を増やしても仕方ない というのもあるけど・・・
まあ、こんなふうに「必要なだけの精度で問題を解く」ってのもセンスのうちかな。
天文学は桁さえあってればいい・・・なんてジョークがあるけど、物理だって必ずしも「どこまでも正確に」
計算することが大事というわけではないのよ。
ふーん・・・でもこれは確かにいい問題ですね。
解決への手掛かりは自分で見つけるもの。
どんな分野であれ、研究職を目指す人にとっては大事なことだね。

それじゃあ今回はここまで。お疲れ様でした〜。
 
 
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